EX#01
- Duelist"s" -

「おそらくこのターンが勝負の分かれ目となる…!」

 イズミはやおら目蓋を閉じ、じっと瞑想する。
「(現在俺が召還しているモンスターは『ネコミミブルマー <cat's ear maple> 』。
 使い勝手のいいモンスターだが、敵モンスターとの戦力差は否めない…!

 ――やはりここは大きな手を打つ必要がある…!)」

 カッと目を見開くイズミ。
「カードドロー!『コスプレアイドル <nurse witch> 』を守備位置で召還」
 イズミの声に応え、フィールド上にウサミミをつけたナース姿の幻影が現れる。

「そして手札からリバースカードをセット!
 ターンエンドだ!」
 結局イズミは守備を固めただけで、ターンはムツミに移る。

「(…イズミのあの目。間違いない。何か狙っているわね…!)
 そうはさせないわ!『浴衣娘 <informal cotton kimono> 』の攻撃。《夏と花火と彼女の浴衣》!!」

 ムツミのモンスターである『浴衣娘』の仮借のない攻撃がイズミたちに迫る!
 だがあわやという瞬間、必中必殺のはずのその攻撃はイズミたちに当たることなく途中で軌道を変えてしまう。

「な!?」
「残念だったな。リバースカードオープン。『春風としまぱんの因果律 <law of candystriped> 』。敵の通常攻撃を完全回避する!」

「――チッ」
 舌打ちするままターンエンドを宣言するムツミ。

「今度はこっちの番だな。
 教えてやるぜ…!これが萌えるってことだ!召還『13歳メイド <maid XIII> 』!!」

 イズミの声に応え、フィールド上に質素なメイド服に身を包んだ小さな黒髪 <ブルネット> の少女が現れる。
 だがそのカードは明らかに攻撃力も防御力もたいしたことのないコモンカードだった。

「何?そのカードは。そんなカードで私と張り合うつもり?」
 は、と鼻で笑うムツミ。だが。

「――チッチッ。俺のターンはまだ終わっちゃいないぜ!」
「何ですって?」

「魔法カード『育成と調教 <candy & whip> 』発動!
 『13歳メイド』はフィールド上の漢属性モンスター2体と合体し、『美人メイドは漢の浪漫 <romantic worrior> 』にクラスチェンジする!」

「――!?」

 魔法カードの効果によりフィールド上の3体のモンスターはひとつに融合し、美しく成長した(主に胸回りと腰回り)熟練メイドへとその姿を変え、そして。
「これで終わりだ!喰らえ!《違いが分かる男のゴールドブレンド》!!!」

 ズウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!

 メイドが手にしたコーヒーカップから漆黒の闇が迸ったかと思うと、フィールド上は一瞬で無明の闇に包まれ、やがて敵を呑み込みながら収束、対消滅する。

「やったか…?」
 手に汗握りながら呟くイズミ。
 次第に闇が薄まり、徐々にではあるが視界が開けていく。

「な…っ!?」
 だが、そこには無傷で悠然とたたずむムツミの姿があった。

「ば、馬鹿な!無傷だと!?」
 ありえない、といった表情で叫ぶイズミ。
 実際それはありえない光景だった。最高ランクの防御力を持つカードをもってしても、あの攻撃を受けて無傷というのはまず考えにくい。

「ふっ…。甘いわね。切り札は最後までとっておくものよ。
 私が場に伏せていたカードをよく見てみなさい」

 そこにはオープンされた3枚の魔法カード。

『三色の薔薇 <tricolor rose> 』
『十字架 <rosary> 』
『姉妹の契約 <pledge of soeur> 』

「なっ…? ──まさか!?」

「そう。特殊魔法コンボ『乙女の聖典 <bible of maiden> 』。
 フィールド上を乙女の園(男子禁制)属性に変換。あらゆる漢属性のカードはその効力を失うと同時にその存在も否定される!」

「――!!」

 その言葉の通り『美人メイドは漢の浪漫』の姿は今まさに砂塵となって消えゆこうとしていた。
 その断末魔の声だけが、高く低く、フィールド上に残響していたが、やがてそれすらも聞こえなくなる。

「これで終焉よ。私のターン!
 フィールド上のモンスターを生贄に捧げ『モワ・メーム・ゴスロリ <moi-meme-goth> 』召還!!
 ――喰らいなさい!必殺《ナボコフのロリヰタ。》!!」

「ぐあああああああああっ!!!!!!!!!」

§ § §

「ふっふっふっ…。これで私の17連勝。完全に勝負あったわね…」
「く、くそっ!もう一度だ!」
「ふたりともー。ねー。遊んでないで宿題手伝ってよー」

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