EX#02
- a Beautiful Morning for a War! -
ピピピピピ…。
けたましい電子音が部屋のなかに鳴り響く。
「んん――」
布団から腕だけ出して、枕元にある目覚まし時計を手探りで止める。
夕べは遅くまで今日のための準備をしていたのでまだ眠い。
(でも起きなくちゃ…)
寝ぼけ眼のままのろのろとベッドから這い出る。
その際スプリングの反動で、ベッドの脇に置いてあったライオンのぬいぐるみがコテンと倒れてしまった。
ハルはその贈り主そっくりのくせっ毛をしたライオンを元の場所に座らせると、微笑みながら挨拶する。
「おはよ。イズミちゃん」
学園祭当日の朝。時刻は朝の六時過ぎ。差し込む朝日がまぶしい。
今日は直前の準備があるため、いつもよりほんの少しだけ早起きだ。
脱衣所でパジャマと下着を脱ぎ捨てて、ぬるめのシャワーをゆっくりと浴びる。
そうしてさっぱりしたあと、一度部屋に戻って制服に着替える。
身支度を整えたハルは、念のため(夕べのうちに準備しておいた)通学鞄の中身をもう一度確認する。
今日は学園祭で授業がないため教科書類は必要ないし。
生徒手帳やハンカチ、ティッシュ、リップスティックなど最低限のものだけ鞄にあればいい。
それと――。
ハルはおもむろに机の上にある、昨夜縫合が終わったばかりの衣装を手にとる。
お姉ちゃんがデザインしてくれた喫茶店のコスチューム。無理を云って自分で縫わせてもらった。
お裁縫はあんまり得意じゃなかったけど。難しいところとか、全部じゃないけど。
それでもがんばって最後までやり遂げたのは全部。
だって大切なひとに見てもらいたいものだったから――。
制服の上から重ね当てて、姿見で確認する。
「――うん。カンペキ」
階下からお姉ちゃんの声が聞こえる。
いけない。もうこんな時間。
早く朝ごはん食べて、学校に行かなくちゃ。
§ § §
念のためかけておいた目覚まし時計をベルが鳴る前に止める。
現在時刻は朝の六時。差し込む朝の日差しがまぶしい。
装備の準備に手間取り、結局徹夜してしまった。
イズミは熱いシャワーを浴びて眠気と汗を落とす。
さて。手順をもう一度確認しよう。
懇意の情報屋から入手した私立アズマリア女学園への侵入経路。別途入手した地下水道の地図と照らし合わせる。
これによると確かに下水道の一部が学園内に通じている。
それなりの代金をふんだくられたが、この情報は正しかったということか。
その他重要と思われるポイントにマーキングをして、それをバッグに突っ込む。
他にもコンパス、GPS、デジタル無線機、コンバットナイフ、小型ドリル、ロープ、ライト、小型望遠鏡、暗視スコープ、赤外線スコープ、ガスマスク、携帯食料、ミネラルウォーター、医療キットなどを黙々と用意しバッグに詰めていく。
万が一道が塞がれていたときのことなどを考えると、コンポジションC4――プラスチック爆弾なども欲しいところだが、さすがに国内では入手が難しいか…。
次は着替えだ。
部屋の一角にあるクローゼットを開けると、なかには様々な戦闘服が吊されている。
イズミはそのなかから品のいい黒のスーツと、くたびれた都市迷彩服の二着を取り出して、しばし見比べる。
(――今回の進入経路は下水道だしな)
そう思い迷彩服をバッとハンガーから取り外す。
それに黒スーツに蝶ネクタイ姿は、隣にボンドガール(肉感的な美女)がいなければサマにならないだろう。
迷彩服を着込み、動きの邪魔にならないよう要所要所をベルトで留める。
あと戦場ではなにがあるか分からない。
念のため腰のベルトには、極細だが丈夫なワイヤーを仕込んである。
これでももし「悪い伯爵の手先に追われる花嫁さんを救って車ごと崖から転落」なんて事態が起こっても安心である。つうかむしろ起これ。
ブーツを履いて準備完了。
自分の姿を姿見に映しながら、
「――うむ。完璧だ」
時計を見るともういい時間だった。そろそろ出発しなければ。
待っていろ秘密の花園にひっそりと咲くまだ見ぬ半開の薔薇たちよ。
さあ、ミッションスタートだ!
... It continues to "Act.03 THE MAJESTIC STAND - A-part -"!